震度とマンション損害について興味深いレポートを発見しましたので、震度とマンション損害に焦点をあてて紹介したいと思います(レポートは東京カンテイ様の「東日本大震災 宮城県マンション 被害状況報告」です。引用にあたっては事前に許諾を頂いております)。
東日本大震災はマグニチュードが9.0で、最大震度は宮城県栗原市の震度7でした(なお、東京都の推計では、東京首都直下型のマグニチュードは7.3、最大震度7の地域が出るとともに、震度6強の地域が広範囲にでると予想しています)。仙台市内の5区のマンション(新耐震基準)の損害程度を表したグラフは以下の通りです。
この調査結果からわかることは、
①震度が6強であってもマンションの建て替えが必要な大破や倒壊は発生しなかった。
②震度6弱のうち、青葉区や若林区に比べ明らかに泉区の損害割合が高い。特に同区の八乙女では、全15棟のうち「被害無」が2棟(13.3%)だけで、「軽微」4棟(26.7%)、「小破」4棟(26.7%)、「中破」5棟33.3%と被災度が高くなっているのは、この地区が川や湖沼が数多く存在する軟弱な地盤で、固い地盤より揺れやすい性質を持っているからである。また軟弱な地盤は土地が沈化または隆起することで、マンションの敷地や外構部分に大きな破損を伴うことが多くなる。地盤の良し悪しの方が被災度に対する影響が大きいことがわかる。
③震度5強と相対的に本震の観測震度が小さかった太白区は、震度6弱の2区以上に損害が発生した。地震によって受けたエネルギーが相対的に小さいはずの太白区は地震に弱い地盤・地質構造の場所が多いと推察される。
④本震によって唯一震度6強を観測した宮城野区では「被害無」は83棟(37.7%)、「軽微」以上の被害ありは137棟(62.3%)。他の区と比べ沿岸の震源に最も近い位置にあることも被害が大きくなった要因であると考えられるが、区内には七北田川が流れ、また区の北部には沼地も存在しており、このような地域特性および地盤強度がマンションの被災度に影響した可能性は否定できない。
<まとめ>マンションの震災被害の度合いは土地・地盤との相関性が高いと考えられる。